下田原谷-枝谷-(05.21)

5月21日
 林道の横に車を止め、釣り支度を終えたのがもう昼前であった。渓流釣りにすれば随分と遅い時刻である。でも、僕たちは急ぎはしない。美しい花々を楽しみ、清冽な渓を辿り、雑木の溢れる程の緑を浴び、そして運が良ければ渓の宝石である渓魚に巡り会えれば充分なのだ。

 今日入る渓は下田原の支流で、過去に二度辿った事がある。その時の同行者は何れも山本氏である。林道から外れ、渓に向かって下降を開始するとキバナノイカリソウが足下とで歓迎してくれる。その横ではニリンソウの群落が風に揺られている。期待していたキクザキイチゲは、すでに花期を終えたようである。花を楽しみながら10分ほどでで流れに辿り着く。美しく、透明な流れは、周囲の山肌に心地良い瀬音を響かせながらせせらいででいる。

 仕掛けを穂先に付けると、釣りの開始である。仕掛けは、美しい曲線を描きながら流れ下っていく。が、反応はは無く、目印はぴくりともしない。以前もそうであったが、この渓は、下流部ににはイワナはいないようである。それでも釣り人の性か、イワナが潜んでいそうなポイントがあればつい竿を出してしまう。視線を流れから解放し、足下に移せばラショウモンカズラが大ぶりの花を溢れんばかりに付けている。しかも、中には、ピンク色の花もある。花の多い渓だ。

 いくつもの滝を越えながら上流に進めば、この渓最大の淵が待ちかまえているのである。 この淵では、何時も良形のイワナが出る。先行していた山本氏が既に一尾取り込んでいた。 私が追いついた時には二尾目を掛けて、奮闘中であった。しかし、取り込む前に糸が切れてしまう。一尾目より大きそうとのことであった。再度仕掛けを流すも、イワナは現れてこなかった。

大物が潜む淵
26cmのイワナ 淵を釣る山本氏
 淵を強引にへつり、さらに上流に向かうと二股に至る。時計を見ると、針は二時に迫っている。ここで、遅めの昼食とする。少し火照った体に、心地良い谷風が抜けて行く。仰ぐ空は、何処までも蒼く透明である。至福の一時だ。

 そして、再び立ち上がり出発である。今日は、左の渓に入る計画である。ブッシュがひどいので、しばらくは竿をたたんだまま上流に向かう。10分ほど進むとブッシュも弱まり、22cm以下は全て放流と決め釣りを再開する。始めは、20cm級のイワナが竿を揺らすが、大物は現れない。イワナはまだ瀬には出ていなく、少し深めのよどみに潜んでいるようだ。小さなよどみに仕掛けを流すと、思いがけない引きが帰ってくる。ネットですくい上げると24cmのイワナであった。

 3時半までと決め、尚も釣り進む。好ポイントが続き、20cm級のイワナは10尾近く仕掛けに掛かるが、25cmを越える良形は上がってこない。諦めかけていたとき、山本氏の竿が大きくしなる。久しぶりの大物だ。24〜25cmの美しいイワナである。時計を見ると3時半を過ぎている。あと30分と予定を変更、さらに上流へと釣り進む。谷間から望む山々からは、殆ど雪は消え僅かにすじ状の残雪をまとうのみである。近くの斜面では見事なサンカヨウが可憐極まりない純白の花を付けている。早速カメラに収める。 再度時刻を確認すると、予定の四時である。さらに上流に向かいたいが、今日はこれまでと決め、下降の開始である。

サンカヨウ ニリンソウ
 五時少し前に、林道に到着。後は一路、今日の宿「つるの」に向かう。林道の横にはヤマフジが咲き乱れている。美しさに、つい見とれてしまう。5時半「つるの」着。今日、山に入った女将さんは既に帰っておられた。玄関の横の部屋には、山ほどの「うど」と、モミジガサ(地元では、藤吉郎と呼んでいる。)置かれていた。夕食は、もちろん山菜づくしである。

5月22日
 今日は、朝から小雨である。それでも大杉谷を目指したが、先行者があり釣りは諦め花巡りに変更。先ずは、ギョウジャニンニクの群生地に直行。その後は、林道をぶらぶら、白峰スキー場へ。雨は、降ったり止んだりで本格的な花の撮影も出来ず。2時半白峰を後にする。