百合谷(05.16)

 白峰漁協の今年の解禁日は3月26日である。だが、定宿である「つるの」に電話すると、今年は近年にない大雪で残雪が多くて何も出来ないとのこと。いともあっさりと、断られる。
 と云う訳で、4月16−17が今年初の釣行となった。

4月16日
 京都8時過ぎに発つと、4時間弱で白峰に着くことが出来る。先ずは、「つるの」に立ち寄り遊魚券を購入。女将さんとは半年ぶりの再会である。20分ほど雑談を交わし、昼食のためまだ雪の残る緑の村へ向かう。思い思いの場所に陣取り、思い思いのコンビニ弁当を開ける。釣り仲間との楽しい一時である。

 そして、いよいよ釣り仕度だ。さーて、これから何処に行こうか。この時期は林道は残雪に被われ、入れる箇所は限られる。思案の末、水谷、岡本組は大道谷に、山本さんと私は、百合谷に入ることにした。

 林道のちょっとした駐車スペースに車を置き、雪の残る斜面を下降し釣りの開始である。何十年も渓流釣りを続けていても、シーズン始めの第一投は心躍るものだ。何時も25cm級のイワナが出るポイントに慎重に仕掛けを流す。だが、目印は何事も無く流れ下るだけであった。10回ほど流すも、何事も起こらずその場を離れ上流に向かうことにした。流れは雪解で増水し、通常より倍以上の勢いでである。飛び散る飛沫が、明るい光線を受けてガラスのかけらのように煌めいている。上流では山本氏が流れに向かって仕掛けを投じている。

 その後、交互に釣り上がるも当たりはは皆無であった。雪面には、真新しい足跡残されている。午前中に、先行者があったのかもしれない。とりあえず、斜面を林道まで登り返し、上流向かうことにした。

 仰げば、一片の雲もない蒼空が拡がっている。「これが、蒼空と云うものです。」と云わんばかりに誇らしげである。斜面に視線を向けると、むら消えの雪を抱えた雑木林が芽吹き始めている。淡い萌黄色は例えるすべもないほど美しい。耳を澄ませば、ソプラノのミソサザエがリズミカルな旋律を山間に響かせている。横には、気のあった友がいる。少し火照った頬には、まだまだ冷たい風が吹き向けて行く。長閑んで、心豊かな一時である。

雪の残る百合谷
 再度斜面を下降し釣りを試みるが、一つの当たりもない。最後にとっておきのポイントで試みるも、仕掛けは空を切るのみであった。時計を見ると4時を少しまわっている。今日はこれまでと、帰路につくことにした。

 雪が消えた斜面を凝視すると、青いキクザケイチゲが群生していた。可憐で清楚な花である。今日は、この花に会えたことで満足としよう。そんなことを思いながら、林道を引き返して行くのであった。

キクザキイチゲ