下田原谷(支谷)(07.17)

 白山祭りの日は、白峰詣がここ数年恒例行事となっている。それに、尺サイズが出るジンクスもある。勿論2004年も大物をねらい、白峰に向かうことにした。今年は、渓遊会のメンバーに加えて山本氏も参加することになった。

7月17日
 水谷、岡本組は、6時に水谷邸を出発。我々は、釣りにしては少し遅いが優雅に7時過ぎに京都を発った。天気予報では、夕方までなんとかもつようである。

 11時過ぎに目的の下田原谷の枝谷に到着。今年、春先に入った谷である。しかし、周囲は夏草が生い茂り同じ谷とは思えない程である。釣り仕度を終え、12時前に出発。谷への下降路は、注意深く探さないと見過ごしてしまう程背丈を超す草にまぎれている。それでも、5分程で流れに立つことが出来た。

 先ず、前回良型が出た落ち込みに仕掛けを流す。と、強烈なあたりがある。しかし、手応えはなく仕掛けは宙を切っただけであった。多分、イワナは目印に食いついたのであろ。その一つ上のポイントでは、山本氏が20cm級をヒットさせている。あまり時間も無いので、大場のみをさぐりながら進むことにする。水量は前回に比べして半減していて、イワナの食いは渋く釣り落とすことが多い。それでも、20cm級が4匹程魚籠に収まっている。勿論、20cm以下は放流である。

 そうこうするうちに、分岐に至る。前回は水量の多い左俣を辿ったが、今回は右俣を探ることにした。水量は少ないが、イワナは意外と濃かった。しかし、型が小さく何度も放流を繰り返す。分岐から30分ほど釣り上がった処でようやく20cm級が出る。魚体をよく見ると、例の網傷が付いているいるではないか。やはり、この谷では違法な漁法がなされているようだ。

 2時過ぎに、上空がにわかに暗くなり大粒の雨が落ちてくる。山本氏はカッパを付けるが、私はそのままで遡行を続ける。時折立ち止まり耳を澄ませば、足下では谷がリズミカルに瀬音を立て、耳元にはヒグラシの透明な鳴き声が染み入ってくる。
岩場を釣る山本氏
地図上でコンター580m当たりまでくると、谷はいよいよ狭くなり、困難ではないが両岸は岩場となる。ここまで来ると、イワナの型も大きくなり20cmを越えるようになる。胸まで漬かって尚も進むと再び分岐に至る。水量も随分と減り、もう源頭であることを告げているいるようである。山本氏は右俣を探り、私は左俣を探ることにした。いずれも200m程で谷は藪の中に消え去ってしまっている。

 左俣最後の流れもない一寸したポイントに最後の一投を試みる。と、瞬間目印は岩陰に鋭く引き込まれる。同時に、少し強めに合わせると強烈な手応えが返って来る。大物だ!慎重にイワナを手前の岩場に引き揚げる。28cmの今日一番のイワナであった。
28cmの太った岩魚
 時計を見ると、4時を廻っている。周囲は薄暗く、時折大粒雨がザーを落ちてくる。僕たちは急いだ。40分程で車に辿り着くことが出来る。後は、白峰に向かって車をとばした。水谷、岡本組はすでに引き上げていた。釣果も、なかなかのものだ。両氏も、随分と腕を上げたものである。

 とにかく、指定席のいつもの二階の部屋に上がりビールで乾杯だ。疲れた体には、何物にも変えることの出来ない一杯である。瞬く間に二本の瓶は空になり、さらに二本追加。

 そして、何時ものように、ボリューム満点の夕食を楽しみ、骨酒にホロホロと酔い、白山祭りを満喫し、夜は更けていったのである。(この夜山本氏も、渓遊会の会員となり顧問の役を引き受けてもらうこととなった。)
無心に踊る村人達
7月18日
 朝から雨である。天気予報を見て、石川県加賀南部と福井県嶺北地方に大雨洪水警報が発令されていることを初めて知ったのである。新潟の大災害の事もあるので、とりあえず急ぎ脱出すことにしたのである。九頭竜川は濁流で大増水、見ていると引き込まれそうな気になる程の凄ましさであった。北陸道は9時半から10時にかけて通過する。ワイパーも効かない無いほどの滝の様な雨である。途中、車窓に飛び込んできた足羽川は満杯で、何時決壊してもおかしくないほど増水だ。

 北陸トンネルを抜け出ると、空は明るく先ほどまでの雨が嘘のようであった。川の水も濁りもないので4時間ほど黒河で釣りを楽しみ帰京の途についたのであった。