下田原谷-枝谷-(04.24-25)

4月24日
 岡本氏から白峰行きの誘いがあった。前回の雪辱戦であることは察しがつく。山本氏にも声をかけると行くとの返事が返ってくる。しかし、彼は朝が駄目なので別行動となった。水谷、岡本両氏は早朝組。僕たちは今日は殆ど釣りにならないので、早朝組に骨酒用に最低3匹の岩魚を調達するように依頼し、山本、川北組は優雅に京都7時半出発となった。

 途中、釣具屋やコンビニにより白峰に到着したのは昼前であった。水谷、岡本組の行動パターンはほぼ把握しているので下田原谷に直行すると、案の定両氏に出合うことができた。谷は雪解け水で増水しとても釣りの出来る状態ではないとのこと。それよりも、片栗の大群落が今満開で素晴らしいからと勧めてくれる。待ち合わせ場所を決め、群落へ向かう。

 ピンクの洪水であった。柔らかな光が、風が、周囲に漂っている。中に身を置けば、カタクリの淡い色が全身に染み入ってくる。夢中でカメラのシャッター押した。今回も、花巡りになりそうだ。

 待ち合わせ場所で「つるの」に5時半と約束し、早朝組は本流目指して下っていった。さー、これからどうするか。慌てることはない。もう今日はどの谷も人、人で溢れている。今から入れる谷など何処にもない。望みは少ないが、下田原谷の林道に入って直ぐ右の小さな谷に入ることにする。

 始めて入る谷はどんなに小さくても、いつもどきどきする。しかし、何度仕掛けを流しても目印はピクリともしない。だが、僕たちは落胆はしなかった。花である。ラショウモンカズラ、キクザキイチゲ、サンカヨウ等美しい花々が散りばめられている。いともあっさりと釣りの道具を仕舞い、カメラを取り出し撮影に専念。
カタクリ サンカヨウ
カタクリ サンカヨウ
 車に戻ると4時を少し過ぎている。今夜の骨酒用にせめて2匹の岩魚と、今夜の宿に向かう途中、もう一度小さな谷に入る。しかし、20cm弱の岩魚一匹だけであった。

 「つるの」には5時半に到着。早朝組は既にビールを召し上がっておられる。勿論ビールを追加し、とにかく乾杯だ。それにしても夕食前のビールはよくまわる。釣果は、早朝組がヤマメ3尾、優雅組がイワナ1尾、骨酒には充分である。

 今夜の夕食は、熊汁である。僕たちは、「うまい、うまい」を連発した。今宵の女将は饒舌である。白山温泉の出身であることや、父親が熊打ちも名人で一冬で十数頭もしとめたことなど懐かしそうに話してくれる。昔はさぞかし美人であったであろう女将(失礼、今でもお美しいですよ)の舌はますます滑らかにになる。熊は冬眠から覚めて餌を食べる前が一番で、餌を食べると臭みが出てくる等次から次へと話題が飛び出してくる。話の合間に骨酒を飲み、無くなると又注文。骨酒は知らぬ間に全身に染み渡り、山深い里はしんしんと更けていくのであった。
やはり、骨酒には岩魚が一番。ヤマメでは、こくが出ない。
4月25日
 朝5時前に目が覚める。窓を開けると、冷気にさーっと包まれる。山を見るとうっすらと雪を被っている。昨夜の雪だ。朝食前に、山本氏とルアーを試みることにし宿を出発。 下田原谷のダム湖の流入地点で1時間半ほど粘ったが、反応はなし。

 宿に帰ると温かな朝食が既に用意されていた。岡本氏は、昨日腰を痛めたとかで今日は写真撮影のみである。水谷氏も同行。8時過ぎに「つるの」で別れる。

 さて、僕たちは今日が本番である。入る谷は昨日品定めをしおいた下田原谷の枝谷である。勿論、僕たち2人にとっては未知のの谷である。車を林道脇に止め釣り仕度を終えたのが、9時過ぎである。目指す谷は、林道から遙か下にある。しかも斜面は急であり直接下れそうもない。斜面と斜面の間の尾根状の箇所があり、痩せて急ではあるがルートをそこに定め下降を開始。山の経験が無ければ二の足を踏みそうな尾根ではあるが、山屋にとっては「任せなさい」と云ったところだ。10分も要さず、下降完了。降り立った谷は、本流とは違い増水もなく快適そのものである。先行者の気配もない。今日は2人だけの贅沢な釣りが楽しめそうだ。

 竿に仕掛けをセットし大きな淵に第一投。すると、竿先がクックッと鋭く揺れる。一呼吸おいて合わせと見事に太った20cm強の岩魚だ。今日はいい日になりそうだ。しかし、この岩魚の側面には妙な模様がある。変だが気にも止めずに、思いは次のポイントへと向かう。ここから20cm強の岩魚が3匹続け様に竿を撓らせる。やはり不思議だ、釣れた全て岩魚の側面には何かで引っ掻いた様な模様が数本あるのだ。

 それ以降も、絶好のポイントが次々と現れるが、魚信はピタリと止まってしまう。やがて水量1:3の分岐点に達する。もちろん水量の多い谷へ入る。灌木が多くて釣りにくい。相変わらず魚信は無い。ワサビが至るところで白い花を咲かせている。キクザキイチゲも白と蒼の優雅な花を広げている。しかし、バカチョンデジカメでは優雅な姿をとらえることは出来ない。それでも、未練がましく何とかしようと撮影を試みる。

 分岐から1時間程釣り上がると、急に魚信が現れ始める。岩魚も初めは放流サイズであったが次第に大きくなり、20cmを越えるようになる。山本氏が大きな淵で23cmを釣り上げる。交互に釣り上がり5m程のの滝にに突き当たる。時計を見ると1時を過ぎている。滝の上にも大物はきっと潜んでいるに違いないが、今日はここまでと決め仕掛けを仕舞うことにする。魚籠を覗くと20cm強の岩魚が7匹、放流した岩魚はその倍はいたであろう。

 改めて振り返ると、谷間の向こうのには雪を抱いた山がまっ青な空を従えて横たわっている。山の斜面には芽吹いたばかりの木々が萌え、小鳥がまだまだ未熟なメロディーでさえずっている。至福の一時である。
滝の淵を釣る山本氏
谷間より望む、雪を抱いた山
 帰路、山本氏に例の岩魚の傷について話をしたのであるが、傷の状態(傷は左右同じ所にほぼ同じ形状で残されている)から網が原因だとの結論になった。それにしてもひどい事をするものだ。
今日の釣果 傷のある岩魚